Club Footの衝撃から2年。あの時期のUKは新人バンド大量生産状態だったが、今思えばFranz FerdinandとこのKasabianの「二人勝ち」だった。
二組は見事にダンスロックの陰と陽を分かち合い、Kasabianの漆黒のグルーヴはFranzとは異なりフォロワーらしいフォロワーを生まなかった。 特別前作が好きだったわけではない。とはいえ、デビュー作を70万枚売り、有象無象の英国ロック界の中で一人ユニークな立ち位置に陣取り、新人らしからぬ態度でふんぞり返る姿は無視できるはずもなく、またそんなふてぶてしさが好ましくもあった。 そして届いた新作。 もう結構前に入手して聴いてはいたものの、なかなかレビューを書けずにいた。どうにもなかなか印象が掴めず、感想も固まらず、正直今でもどうコメントしたものか悩むのだ。 音楽的には大きな変化はない。真っ当な前進とはこのこと。 サイケな雰囲気にあくまでロックな縦ノリ感はそのままに、ストリングスやブラスを取り入れたりして新しいアプローチも見せてくれる。 でも、そうやってなるほどなるほどと思って聴いていて、いつのまにかアルバムが一周している。もう一度聴き直してみても、何か取っかかりが掴めない。 どうもこれは、こぢんまりと纏まり過ぎてないか。優等生になってしまってないか。 そして、一番期待していた部分、つまりKasabianならではの「黒さ」が影を潜めているのが最大の問題。 前作とあまり変わっていないはずなのに、何か物足りない。ピースの欠けたジグソーパズルのような手落ち感が最後まで抜けず、今でもモヤモヤして仕方がないのだった。 PR 巨大な星々が、とてつもなく巨大なブラックホールに飲み込まれていく("Supermassive Black Hole")――バンド史上最大スケールの音塊が見せるのは、まさしく全てを飲み込むブラックホールのように底知れない新世界。
02.Starlightや06.Invincibleで今までにないポジティブなロマンティシズムを披露し、お得意の泣きメロと激情ヴォーカルで強引なまでに涙を誘ったかと思えば、ディスコ・ファンク・チューン03.Supermassive Black Holeがエロティックにリフを刻み出した途端部屋は即席ダンスフロアに早変わり、否応なく力ずくで踊らされる。アルバム後半では突如として民俗音楽のテイストを帯びたりさえする。 もはや、なんでもあり。「なんでもあり」であり、「なんでもできてしまう」のであり、それでいて「なにをやってもMUSE」であるというこの圧倒的な存在感。これぞ完全無欠のオリジナリティ。 こんなアルバム、誰が真似したって作れないもの。 不敵なバンド名が心をくすぐる、4ピースのシューゲイザーバンドの2nd。
一度は「過去のモノ」扱いされたはずの「シューゲイザー」の単語がここ最近再びちらほらと聞こえるようになって、このAPOFの新譜もレコード屋の試聴コーナーによく並べられている。 1stを聴いていない私は、新世代シューゲイザーと聞いた時点で、21世紀になって若いバンドが改めて真似したがる音、と考えて勝手にマイブラのLOVELESS的なものを想像してしまったら、・・・あれ、ポップだねこの人達。 難しいことを考えずに、ノイジーな轟音ギター+エコーのかかったボーカルという元々のシューゲの方程式を素直に解いてます。 たまに7拍子の曲が出てきたりしてポストロックを気取ってみても、あくまで全体の雰囲気は聞きやすく爽やかで、サイケな雰囲気は無し。 あまりに馬鹿正直に靴を睨んでるので最初は肩透かし、でも聴いてるとやっぱり気持ちいい。そう、まさしくこの浮揚観こそが。 自分たちの作りたい音がここまではっきりしてるというのもなかなか清々しいものだ。良盤です。 人間の持つ頭のてっぺんから爪先までのすべてのエネルギーを掘り起こし、増幅させ、なりふり構わず放出する。
数曲の佳作に同じくらい駄曲を足してかさ増ししたようなアルバムがありふれる中で、どこを切っても100%濃縮果汁がドロリと溢れ出てくるこの濃密さはどうだ。 濃密過ぎてもうどうにも省くパートが見あたらず、字数無制限の全曲解説を断行(READ MOREでどうぞ)。 02.Time is Running Outや04.Stockholm Syndromeのような爆発的ダイナミズムに03.Sing For Absolution、05Falling Away With Youのセンチメンタリズムが織り込まれ、緩急自在、一張一弛。 そして10.Butterflies And Hurricanesの完成されたMUSE的一大ロック絵巻。 曲単位で繰り返される「溜めて、溜めて、爆発」というMUSEサウンドの定義とも言える手法が、アルバム全体でも展開される。 言ってしまえばワンパターン。でもその同じ手で何度でも何度でも昇天させるこの力業が、恐ろしい。 ロックの限界なんてとっくに超えているのに、あくまでも人間的な美であり興奮であり、だからこそこのアルバムをきっと一生手放せない。 気後れ無く宣言できる、歴史的名盤。 流浪の(もしくは不遇の)3ピース、Southの3rd。
デビュー時在籍していたmo'waxレーベルは消滅し、2ndを出したレーベルも潰れ、這々の体で出したこのアルバムは2ndのプロデューサー・エリンガのサポートを受けてのセルフプロデュース。 正直、初めに聴いたときは全くピンと来なかった。前作の幻想的な世界観はどこへやら、これじゃタダのギターポップじゃないか。 ところがこれ、なかなかのスルメ系である。地味でインパクト皆無なアレンジが、逆にメロの良さを引き立てる。無駄をそぎ落とし、ストイックに「いい音楽」を追求する真摯な姿勢。特にストレートなポップネスが炸裂する01. Shallowや06.Place in Displacementは紆余曲折を乗り越えて再起した彼らの自信が伝わってくる。 前作でも効いていたタイトなドラム、特にスコーンと突き抜けるスネアが健在なのも嬉しい。 もし一聴してイマイチと感じても、我慢して3回くらいじっくり聴いてみて欲しいアルバムである。 ただ惜しむらくは、セルフプロデュースの弊害か、音質があまり宜しくない。そして、前作のようにエフェクトを効かせていない分歌の下手さが・・・まあ、味があるからいいか。 『僕らの時代のThe Smith』―この上なくそそられるキャッチじゃないか。
ニューウェーブリバイバルの次はマンチェスターリバイバルだと言わんばかりににわかに騒がしくなってきたマンチェスターの街。Keithもこの街から時流を待ったかのように満を持して飛び出した新人バンドである。 01.Back Thereを聴いた瞬間、なるほどと思わず膝を叩く。ボケた音像、乾いた歌唱、紛れもないマンチェスターの音。 独特の浮揚観はThe Stone Rosesを思い出さずにはいられないし、ボーカルスタイルはMorrisseyにも繋がる。04. Mona Lisa's Childなんて「いかにも」だ。 そこに現代的な乾いた感覚とダンスミュージックの要素などを混ぜ入れ、スマートに纏め上げるセンスの良さは出色で、他の新人達に比べても一歩抜きん出ているように思う。うん、とってもセンスが良い。 全体での楽曲の完成度で見るとまだまだ若い。でも、今後の大化けに期待したい。 ひょっとしたら、今聴いておけば「リアルタイムでSmithsを体験した」の21世紀ver.を彼らはもたらしてくれるかもしれない。あくまで、ひょっとしたら。 君たちの選んだ方向は大正解だ、万歳!
Southampton出身の4ピース、Delaysの2ndアルバム。 優等生らしいネオアコを鳴らしていた1stも良いことは良かったけど、この2ndは何かが吹っ切れたような素晴らしさ。 ネオアコから享楽的ポップネスへ。ポップなのに美しく、ポップなのに踊れる。 グレッグの声には独特の中毒性がある。地声はダミ声なのにファルセットは超純水の煌めきで、特に2.Valentineなど聴くとうっかりかのLa'sを思い出してしまって涙腺が潤みそう。この曲がもう聴けば聴くほど癖になる。'80s調の万華鏡の如く華やかなPVも相まって、気がつけば今日10回目くらいのリピート。(PVの後半、"Is coming for me~(パンパン!)"の手拍子がとってもチャーミング!) ボーカルはLee Maversと繋がるけど、キラキラしたギターは「毒気が完全に抜けたThe Smith」なんて表現もアリかもしれない。そして80年代的手法のベースラインがこれまた良いのだ。 アルバム全体としても、コンポにアルバム入れて流しっぱなしにしたら気が付きゃうっかり何周も回ってました、なんてことがままありそうな粒ぞろいの楽曲群に思わず顔がほころんじゃう。 一時期のニューウェーブリヴァイヴァルはフランツとキラーズが勝者に収まり落ち着きつつある。ガレージブームも少しずつリスナーが食傷気味になり収束に向かう。でもDelaysのこの音は、ブーム度外視で生き残れる地力を感じる。 PV "Valentine" (YouTube) 横浜のタワレコにて視聴、即購入。
英国レスターの音楽大学出身の4人組のデビューEP。 とにかく一聴してすぐ購入を決意した1曲目”He Films The Clouds”が強烈に激しくも美しいファーストインパクト。 ゆったりしたピアノに折り重なる高速で硬質のドラムスが折り重なる様はポストロック的ドラムンベースといった趣で、ロックというよりテクノ色が強いかも。 時には呟くようなサンプリング音声と静かなピアノの旋律で落ち着かせ、時には轟音ギターで捲し立て、そして無機質、焦燥のデジタル・ビートが煽る煽る。かっこいい! デビューEPとは思えないこの完成度。何者なんだ君たちは。 1stアルバムもこのレベルで纏め上げられたら、しかももう少し全体でバリエーションと変化を持たせられたら、こりゃ相当なものになりそうだね。 初めて再生ボタンを押してみた時の感想としては、なんだ、案外聴きやすいじゃない。
Kid AやAmnesiacに近いという言われ方もされているけど、このアルバムでのトムは「後退」「回帰」はしていない。バンドの形態を忘れることで作られた内職的引きこもり音楽Amnesiacから、少しバンドとしての姿を取り戻し、過去の軌跡とは繋がりつつも別の方向へ向かおうとしたHail To The Thief。とするとそこから再びバンドを抜いたらやっぱりAmnesiacみたいな音になったと、そういう解釈を勝手にさせていただいた。 |
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